今年のSCTEでハイライトされていたDOCSIS3.1のPNM的な拡張仕様について、少々書いてみようと思います。ネタ元は、以下あたりです。

DCCF (DOCSIS 3.1 Common Collection Framework)
DOCSIS3.1に対応したPNMフレームワーク。
使い方を記したTR(Technical Report)は、以下のURLを参照して下さい。

https://apps.cablelabs.com/specification/CM-TR-DCCF-PNM

なお、TR中に記述されたソフトウェアは、CableLabsのC3リポジトリから取得可能です。

さて、今年の目玉は、DOCSIS3.1の物理層を根本的に見直す拡張オプションであるFDX (Full DupleX) 即ち、上り/下り対称・ギガビット級伝送を実現する技術規格でした。
FDXは2016年2月にコンセプトが公表された新概念であり、従来は42MHzであった上り周波数帯域の上限を拡張して上り方向の高速伝送を実現します。
具体的には85MHz, 96MHz, 192MHzから選択します。
対応製品が世の中に登場するのは2020年以降との事です。
が、FDXに関しては、PON化が急速に進む日本で実需があるのか、個人的には疑わしいと思っています。米国でFDXが登場する背景は、PON化の設備投資が膨大だからですが、日本は総務省補助金で光化が既に相当進行していますから、J:COM/KDDIを除くと、むしろFDXの方が高コストとなる可能性がありまます。そうなりますと、日本市場での実質的なDOCSIS3.1の意味は、やはり「PONに匹敵し得る高速化」に尽きると思います。

CATV双方向通信では長らく、SNR/MERの条件が厳しいのは流合雑音問題を伴う上り方向伝送であり、下りは比較的余裕な事が常識でしたが、高速化を追求するとデジタル変調のシンボルレートが上がり、トレードオフとしてSNR/MER条件が厳しくなり、結果として「監視」の主たるボトルネック指標が、従来の上り品質からこれまで軽視されてきた下り品質にシフトします。
今や動画もIPストリーミングが支配的な時代ですから、下りの伝送品質変動は、QoEの低下→解約率の上昇→加入者のCATV離れへと、割と直接的につながります。

そうなりますと、従来より注目すべきとの掛け声が高かった「PNM:Proactive Network Maintenance」即ち「予防保全」ソリューションも、従来の上り伝送品質を対象とした方式から、むしろ下り伝送品質を対象とした方式に重点が移る事になります。
この結果DOCSIS3.1では、主に下りのPNM関連機能が強化されました。
そういう視点で上のフレームワークを読むと、何故こうなったのか、ある程度見えてくる筈です。

ですので、我が社としてPNMを更に推進していく場合、もしもDOCSIS3.1対応を主軸とするのであれば、製品ロードマップ的には「DOCSIS3.1 PNM技術の応用による下り伝送品質監視機能の強化」的な表現になると思います。
一方でDOCSIS3.1については、他の投稿でも書きましたが、日本市場で本当に必要なのか、慎重な見極めが必要な気がしています。
我が社のお客様がどうお感じになっておられるか、色々とご意見を拝聴して回りたい所です。