今年の10月下旬、掲題の恒例イベントに出張参加してきましたので、細論に先立ち、一先ず全体への総括的な印象を書き出してみます。

私がGI/Motorolaの社員としてA/P地域からの来訪者対応で展示ブース内に立っていた90年代頃と比較すると、特に大手各社の展示方針は、内容もありますがそもそもの展示方法自体が大きく様変わりした感があります。
というのは、私自身もそうですが、これだけネットが普及すると、新製品・サービス情報の収集・調査をしたいならば、物理的に自身が遥々と遠方の展示会場に行くよりも、ネットで調べた方が早いし効率も良く、かつ場合によっては情報量も多かったりと合理的です。
こういうご時世でわざわざ会場に足を運ぶ主旨・目的は、ネットにはアップできない裏情報とか正式な発表前の先行情報、ないしは他社との競合分析を製品マーケティング担当者自身の口から聞いたり、あるいは良い製品・技術があれば代理店契約などして日本に持ち込んだり等々、皆さん私同様にそういった感じだろうと思っています。
来場者の多くが上のような意識なので、展示側も物理的な機器展示には重点を置かず、画面やパネルを活用したコンセプト&デモ動画の展示に担当を配置、対話を重視した展示方針が過半の印象です。
一昔前に見られた、各社ブースのカタログ収集にせっせと精を出す来場者も、対話重視の各社から見ると、今や「そんなものネットから落とせば?」で終わる単なる奇異な行動であり、わざわざ高い
コストを負担して遠方遥々来たのに、誰とも会話せずに何しているんだか、という事で、そういう方々は展示側は基本無視します。
そう考えると、展示会自体がもはや無用では?との極論もあながち偏った暴言ともいえず、少なくとも私自身はそう思っています。

上のように思っているにもかかわらず、今回私が何故にわざわざ高い航空チケットと宿泊・レンタカー代を負担してまでも遥々今回会場のデンバーくんだりまで足を運ぶ事にしたのか?と言いますと、一つはSCTE Cable Tech EXPOが単なる展示会ではなく、技術者向けの勉強会の意味を持っており、多数開催される”Workshop”という講演会に結構面白い発表が混じっている事があるから、もう一つは、GI/Moto時代の同僚が会場内を多数徘徊しており、Long time no seeな旧知と再開できる(お互いに)貴重な場だからです。

Workshopの方は、今年はSDN/NFVに注目、北米の動向を何か学べればと考えていたのですが、結果は正直肩すかしでした。
というのは、ようやく幾つかの商用製品が市場に登場し始めており、テレコム業界からの流入組も何社か見られたのですが、如何せんWorkshopへの聴講者の意味での出席者が少なく、どの会場も箱に
比べた聴講者数が1割にも満たない寒々しい状況と、技術以前に業界の注目度が低く、OSS/BSSソフト屋としては残念な限りでした。
Workshop自体が終わっているのかというとそうでもなく、例えばDOCSIS3.1 CMTSの閾値等動作設定に関する経験談の講演は満員御礼、立ち見が出る程の盛況だったので、やはりSDN/NFVが不人気なのでしょう。
私自身、そもそも何故にSDN/NFVを調査しようと思い立ったかといいますと、ここ数年ほどFTTH PONをDOCSIS的な方法でプロビジョニングするDPoE/DPoG技術に注目しており、この延長線上に
SDN/NFVがあるものと考えており、そろそろ具体的な方式提言が出始めたのでは?と期待していたからです。
そういう意味では不人気はともかく、少なくとも出来不出来を論じる程度には論じるに値する、それなりといえばそれなりの発表が一応は幾つかはあったので、これらについては後日別の投稿でアップしようと思っています。

さて、どうせなら折角なのでDOCSIS3.1のWorkshopも聞いてみようと考え、幾つか参加してみて改めて思ったのですが、日本では、前の「光の道」構想での大規模な補助金等政府の後押しもあり、他国に比べFTTH化が進んでいるため、DOCSIS3.1の主目的であるバックホール通信の高速化であれば、日本はPONで済んでしまう気もしており、そういう意味では3.1が本当に必要なのは、ひょっとするとHFC資産が圧倒的に多いJ:COM及び、一部の大規模事業者だけかも、とか改めて思いました。
というのは、上り/下りの周波数アロケーションを変えるための大規模な伝送路の改修投資とか、日本では今更誰もやらないと思いますし、PONに匹敵し得る高速化というテーマ自体も、光敷設のコストが安い日本では、素直にPONへの置換で良い気がします。
北米で何故にDOCSI3.1が必要なのかというと、ひとえに光敷設のコストが高いからであり、このあたりの方式検討に先立つ各国固有の前提条件が、日米では既に根本的に異なってきています。

一昔前の護送船団方式による日本市場の産業障壁を外資の圧力で崩し、日本のガラパゴス化を回避する事で、逆に国際競争力を高めようとの思いで、私自身は以前から北米DOCSISを日本に持ち込む事
に、それなりの使命感を感じながらこれまでやってきたので、多分業界からは、私はDOCSIS屋のレッテルを貼られていると思います。
が、3.1以降のDOCSISは、日本は北米と別の道を歩むかも、そろそろパラダイムの転換期かもと、今回は割と真剣に思いました。
とはいえ、腐ってもDOCSIS屋ではありますので、次回以降、少しずつ3.1の新概念について、主にOSS/BSSアプリの視点から書いてみようとは思っています。

会場で偶然、NZからDaniel Soong, 香港からKevin Wongが来ていたので、?一緒に晩飯を食べながら、DOCSIS3.1とPONをテーマに、お互いのお国事情を情報交換しつつ雑談しました。両名ともEx.GI/Motoの仲間(元上司&同僚)で、現在DanielはCasa、KevinはCiscoを経てPacific BroadBandという豪州のFTTHメーカーに勤務しています。Kevinからは、日本でPONの引き合いはないかと聞かれましたが、お互いにハードの輸入ビジネスでメーカー側の立場で大変に痛い思い(不良率とか品質とか国民性の違いとか)をし合った同志でもあるので、お互いに苦笑いでやめました。

話をSCTE展示に戻しますと、Cable Labsのブースに立ち寄った際、以下の各プロジェクトの関連URLの紹介を受けたので、取り急ぎ転記しておきます。

DCCF (DOCSIS 3.1 Common Collection Framework)
DOCSIS3.1に対応したPNMフレームワーク。
WCCF (Wi-Fi PNM Common Collection Framework)
Wi-Fi向けのPNMフレームワーク。

使い方を記したTR(Technical Report)は、各々以下のURLからダウンロード取得できます。

https://apps.cablelabs.com/specification/CM-TR-DCCF-PNM

https://apps.cablelabs.com/specification/WR-TR-PNM-WCCF

個人的には、双方ともに一部肯定的、一部否定的な印象を持ちましたが、そのあたりも次回以降、少しずつ書いてみたいと思っています。それでは、今回はここまでとします。