SCTE Cable Tech EXPO 2020 – 電源管理の高度化

米国EDTの10月15日(木)13:00PM-14:00PM、”Powering 10G: What It Takes & How to Do It”というセッションが開催されました。
本セッションは、5Gの要件である10Gbps以上のアクセスネットワークを実現するための効率的な給配電方式と、これを実現するための合理的な構成管理・状態監視方式に関するものであり、これらをSCTE IPS WG1が標準化・普及を推進するGAP(Generic Access Platform)への概念統合を前提に論じるものでした。

最初にPajarito Technologies LLCのFrank Sandoval氏が、GAPの概要とAPSISについて説明しました。
GAP自体は単なるノード機器のハウジング形状の規格化・共通化に過ぎませんが、各ノードとセンター側のノードマネージャー間の通信をNETCONF/YANG, XML, sshを前提とした点に新規性があります。ノードマネージャー≒NETCONFクライアントには上位APIとしてRESTが採用され、各ノード機器の設定データモデルにはYANGが使われます。
GAPノードに実装される電源管理用のインタフェース規格がAPSIS(Adaptive Power Systems Interface Specification)です。APSIS(SCTE 216)は、IETF RFC7326(電源管理)と同RFCに関連する各定義に基づいており、複数機種間の相互接続性を実現します。YANGスニペットはeman@2020-06-17.yangから入手できます。
SCTEの試算によると、CATV網の消費電力の実に73~83%がアクセス網即ちノードと周辺機器だそうで、CATV網全体の消費電力の低減にはノード電源の効率化が最も有効との考えからGAPでは電源管理に重点を置いているそうです。
消費電力低減の意味では、単なる電力関連項目の遠隔計測ではなく、状況に応じた動的管理(制御)、例えばデマンドレスポンスなどもユースケースとしてあり得ます。
例えばデータ伝送量のオフピークタイムに低消費電力となるような能動的な制御を実施したり等々。
APSISのNETCONFクライアント≒ノードマネージャーの実装にはOpenDayLightオープンソースないしはこれに準じるアプリを想定、次ステップとしてはGAPシミュレーターの開発とこれを用いたノードマネージャーの改良・各種電力制御ユースケースシナリオの実証実験等々との事でした。
コンセプト的には面白いと思いましたが、SNMPに対するNETCONF/YANGの優位性はGETでなくSET即ち変更&制御とトランザクション管理を必要とするケースであり、云う程に電源周りを動的に制御する必要性が果たしてあるのか、かなり疑問に感じました。
発電ソースがメガソーラーとか多様化し、給電系統と回路を動的に制御しなくてはならないグリッド側のシステムであれば、制御の必然性は良く分かります。
が、負荷側であるCATV網で制御まで動的にやるのはどうなんでしょうね。
WiFi6が目指した通信シーケンスの見直しによる待機電力の低減とか、負荷側の能動制御による電力需要の低減であれば、とても意味があると思うんですが。

次にCable Labs.のRobert Cruickshank氏が、CATV業界のビッグデータプロジェクトの一つである”Gridmetrics”について概説しました。Gridmetricsの基本コンセプトは、複数MSOのCATVネットワーク内の各PSの電圧値の高低・変動情報を5分間隔で収集、インバーター状態と日付時刻情報を付与してクラウドに蓄積、Gridmetricsが予め準備するAPIを通じて電力事業者等のユーザーが各々の目的に応じて利活用するというものであり、各APIは監視用・イベント・履歴の3つに分類されるそうです。
現時点では従来のSNMPベースの監視指標ないしはステイタスモニターシステムが提供可能な情報を前提に設計されていますが、より多くの指標、より高精度を実現できる次世代型電源センサーも開発中との事で、この辺りがGAP規格に統合されて行きそうです。

最後にEnersys社のRob Anderson氏が、DAAノードにおける電源消費状態特に所謂I2R同軸ロスの実情、不適切な印加電圧によるバッテリー短命化問題、合理的な対処としての予防保全の有効性などを説明しましたが、あまりGAPには関係ない気もしました。

分野的には我が社が注目している領域ではありますが、正直言って左程の真新しい内容は含まれておらず、今やらねば!という強いモチベーションまでは感じませんでした。

余談ですが、Enersys社は2018年12月に米CATV業界PS最大手だったAlpha社を買収しました。Enersys社の2018年度の年商は2.580億米ドル、従業員数は約9,000人との事です。
あのAlphaが何とも大きくなったものです。それだけ業界横断的に電源の重要性が増しているという事なのかも知れませんね。