SCTE Cable Tech EXPO 2020 – CATVとAI

AI絡みのセッションは二つ拝聴しました。

一つは米国EDTの10月15日(木)10:00AM-11:00AMに開催された”AI in the Plant: What Our Machines are Learning”というセッション、もう一つは同日の13:00PM-14:00PMに開催された”How Artificial Intelligence & Machine Learning Are Improving Operations and Services Delivery”というセッションです。

前者のセッションは、DOCSIS伝送で問題となっている歪・エコー成分の除去にAIを活用するというもので、原理的・技術的要素の強いものでした。
最初にGeorgia Institute of TechnologyのQi Zhou氏が、Deep Learning手法を応用したエコー除去フィルターのDOCSIS4.0 FDXにおける有用性、特に周波数非依存で1.8GHz領域まで一定の効果を期待できる点について説明しました。
続いてComcastのRob Thompson氏が、改めてのMachine Learningの概念紹介後、DOCSISイコライゼーションに使われる線形アダプティブフィルターが単一ニューロン概念モデルに近しい事、Machine Learningの応用次第では線形歪に留まらず非線形歪の除去にも活用できる筈である事、今後はDOCSIS回路内のTx/Rx間フィードバックも鍵となり得る事を説明しました。
前者の方式だと学習結果はDSP内又は周辺記憶素子に、後者だとCMTS/CMに保持するという事でしょうから、ノード/RPDとCMTS/CM要のチップセットベンダーが自社製品の需要が拡大するので喜びそうな内容ですが、それでも伝送品質の改善に一定の有効性がある事は確かに間違いなさそうな応用例だと思いました。

後者のセッションは、前者よりも応用的・業務活用的要素の強いものでした。
最初にTelecom ArgentinaのClaudio Righetti氏が、AR(拡張現実)の概説と自社による積極的な応用志向について説明しましたが、AIやVR/AR等の基礎を一般論的に説明する入門的な内容だったため、本稿で特筆すべき点は特になかったと思います。
次にIMMCO社のKeith Hayes氏が、ノード分割設計業務へのMachine Learningの応用事例について説明しましたが、画面例を見る限り、本当の意味で人間の思考・業務を全て代替できている所までは、残念ながら至っていない印象でした。
最後にCharterのSrilal Weera氏が、”MLAAS(Machine Learning As A Service)”について説明、応用例として、好まないチャンネルを予め予測・除外する事によりチャンネル移動アクションを抑制して広告視認率を向上するレコメンデーションエンジンへの活用手法を説明しましたが、そもそも論としてそういう動作自体があって良いものなのか個人的に疑問でもあり、気分的に今一つ素直に拝聴できませんでした。
何れにせよ前者のセッションに比べて、即効性・実用性に今一つ乏しい概念紹介的な内容に感じました。

AIという概念自体は50年以上前から既に存在し、我々は知らず知らずのうちにこの概念を応用した何らかのアプリケーションを既に開発していたりしますから、今更大上段にAIとは云々といった発表は意味に乏しいと思います。
そういう意味に乏しいセッションが昨年迄は多くみられ、例えばMachine Learningの基礎解説とかやっていたようでしたが、今年あたりからようやく現実的な応用事例の発表が出始めた印象です。
が、上述の各発表は何れも有用性の示唆であり、未だ大規模商用展開の事例報告には至っていません。
それでも、これからが楽しみな領域・分野である事には異存ありません。
今後の更なるAIの発展&普及に心より期待しております。